【山行記録】上高地から涸沢へ、憧れの地でのテント泊を。(3/4)
4時過ぎ、起床。
天気と、腰の状態。
モルゲンを見ようと早起きしてみたものの、外はどんよりと曇っていて、モルゲンどころの天気じゃない状態でした。
山と食欲と私的な涸沢のモルゲンをちょっと期待していたところもあって、さすがに涸沢に2泊もすれば、1日くらいはナイスなモルゲン見られると思ったんですけどねえ…。
ちょっとアテが外れて悔しいのはありますが、最初から何もかも希望が叶ってしまうと、次につながる楽しみがなくなるとも思うので、やっぱり程々がいいのかな、と。
ギックリ腰の方は、この朝の時点で大きな痛みは無くなっていましたが、やはり無理な体制をとろうとすると、やっぱりちょっと鈍い痛みが走ります。
所謂、腰の座りが悪いって言う状態で、今日もやっぱり無理はできないっていうか、元からするつもりもありませんけれども、やっぱりこの状態でテント泊装備を担いで下山するのは、やっぱり不安。
で。
一応テントから顔を出して、時々外の状況を伺っていたんですけど、何か顔に冷たいものが当たる、ような気がしたんです。
割と曇りな天候だし、最初はガスが涸沢まで上がってきたのかなーなんて呑気に考えていたんですけれど、テントの中に入って耳を澄ますと、フライシートを微かに叩く「ポツポツ」と言う音が。
…これは雨が降るな。
せめて、横尾か本谷橋まで下りるくらいまでは雨は待って欲しいって言って、天気が待ってくれるはずもない。
いつ降り出してくるか分からないので、兎に角もう早く準備をして、早く下山を始めるしかない。
とりあえず、簡単なものをお腹に入れて、撤収準備を始めたわけですが、そもそもテント内で色々と散らかしまくってるので、なかなかそれが片付かない。
涸沢のテン場って、大きな石がゴロゴロしてて歩きにくいし、腰の調子も悪いし、なかなかテントの撤収も手間取ってしまった感じです。
こんな時に限って、テントもシュラフも、なかなか袋に入ってくれないし…。
そして、ちょうどぼくが撤収準備していると、昨日猿の話が大ウケした男性が近くを通りかかりまして、ぼくの腰の状態を大変気にしてくださいました。
ありがとうございます。
何とかパッキング終了、と思いきや、雨が少しずつ強くなってきてしまい、この後は多分天候は悪化するなーと思い、ザックカバーをつけようとしたのですが、テントマットをこの形で固定しているとカバーが嵌らないので、仕方なしにテントマットは横付けとなりましたとさ。
パッキングが概ね終わったものの、結局迷いに迷った挙げ句、レインウェアを着て下山することにしたので、またザックからレインウェアを引っ張り出したり、コンパネの返却に行ったりと、やっぱり素早く撤収するのって難しい…。
不安で仕方のなかったテント泊装備が詰まったザックも、何とか背負うことが出来ました。
(ただ、この状態で何時間も歩けるかは、正直この時無理だと思っていました。)
下山開始。
ヒュッテの前まで歩いてきましたが、ここで普通に雨が降ってきまして…、せめてもう一時間でも待ってほしかったなあ、と。
下山する時は、もうちょっと余韻を楽しみつつ下山したかったんですけどねえ…。
涸沢からの下山は、大きな岩が階段状になっているので、決して不安定な登山道ではないはずなのですが、自分が大きくて重い荷物を背負っている事と、腰の座りが悪い状態だった事で、一歩一歩がおっかなびっくりで恐る恐るなので、とんでもなくペースが遅い。
ただもう、足を滑らせてひっくり返った時に、ギックリ腰が再発してしまったら、もうきっとその場から動けないだろうし、この時はもうとにかく慎重に歩くことだけを考えていました。
この辺りで割と雨が上がったように思われまして、途中でレインウェアを脱ぐ人もいましたが、自分は着たまま下山を続けました。
正直、蒸し暑くて、汗だくになってしまっていたので、一秒でも早く脱いでしまいたかったんですけど、着たり脱いだりは時間かかりますし、ザックを下ろすのが嫌だったんですね…。
本谷橋着。
一歩ずつ恐る恐る休憩しつつ歩いたせいで、がっつり2時間位ここまでかかっています。
ただ、割と雨も上がったかな、という感じだったのでやっとここでレインウェアを脱ぐことが出来ました。
ザックからドリンクを取り出して補給したり、お腹に栄養入れたり。
場所的にも川の真横なので、結構良い風が通るんですよね、ここ。
いい感じに涼んで、いい感じの休憩を取らせてもらいましたとさ。
さて、下山再開。
あまりここでまったりしてると、体が冷えてしまいそうでした。
登りのときは、この低い方の橋は渡らなかったので、下山の時に渡ってみたのですが、思いの外揺れてドキッとしたり。
ここからは、涸沢からの下りのような険しさはないので、もうちょっとペースを上げてもいいかななんて思ったりしましたが、これくらいのペースをキープしていけば、夕方までには上高地に着けそうだし、無理なペースになって歩けなくなったりするのも嫌なので、ぼちぼちのマイペースで歩くことにしました。
そして折角レインウェア脱いで、いい感じに歩き始めたと思ったら、速攻でまたそこそこの雨が降ってきまして。
折角脱いだレインウェアをすぐ着直すのも悔しかったので、暫くそのまま歩いてみたものの、そのまま歩いてずぶ濡れになって、明日風邪ひくとかは避けたかったので、おとなしくレインウェアを着直すことにしました。
(いやもう汗がずぶ濡れだったんですけども。)
屏風岩も大雨に洗われています。
横尾大橋着。
…大雨。
横尾山荘着。
…大雨。
ここで、皆さんトイレ付近で雨宿りしていました。
中には登るか引き返すかをシリアスに話し合っているグループなんかもいたり、割とカオスな状態。
ひとまず自分はトイレを済ませて、軽くお腹に補給をして、ちょっとでも雨が小降りになってくれないかなーなんて思って一瞬空を見上げたんですが、待ってる時間があれば歩く方がいいとしか思えない空模様だったので、そのまま有るき始める事にしました。
ここからは平坦な道なので、ちょっとは楽になるはずだ…なんて思っていました。
確かに傾斜がなくて楽は楽なんですけれど、涸沢からの下りでやっぱり消耗していまして、その上でひたすら単調に歩き続けるというこの状態が精神的にも苦痛。
初日はこの上高地街道を歩くことですら楽しかったのに、帰りはとにかくしんどい。
ほんとにしんどい。
上高地街道を戻る。
徳沢。
相変わらず雨が強くて、ザックを下ろすのも面倒で、ちょっとベンチっぽい丸太に座って休憩して、また歩き始める。
そろそろお昼で、お腹も結構空いてるけれど、ザックカバーを外して、ザックから行動食を出すのも面倒だし、レインウェア脱いでみちくさ食堂でご飯食べるのも、兎に角面倒。
多分こういう雑なところが、自分も欠点なんだろうけど、疲れてくるとこういうところが出てしまうんでしょうね。
徳沢から上高地までは、だいたい2時間。
6、7kmくらいありますでしょうかね。
なんて考えるだけでも疲労が増すだけなので、とにかく無心に歩く、歩く、歩く。
実は、お昼は、出来れば嘉門次小屋で食べたかったんですよね。
だから、頑張ってご飯を我慢して歩いてきたんですけど、明神が近づく頃には、結構やばい状態になっていまして、そもそも嘉門次小屋に行くのも諦めようかな、なんて弱気にもなっていました。
お腹が空いてるのは、良くない。
ってことで、明神館で天ぷらうどんをいただきました。
最初は、メニューにイワナ定食があるのに気づいたので、注文しようと思ったんですけど、提供まで時間かかるって言うことだったので、比較的にすぐ出してくれそうな天ぷらうどんにしました。
平地で天ぷらうどんと言うと、少なくとも関西では海老天なんですけど、ここの天ぷらうどんはかき揚げ。
これがいい感じでおうどんの出汁を吸って、美味しいんですよね。
そして、この後どうするか?ってことを、考えました。
自分としては、嘉門次小屋に行きたいし、明神池も見たい。
これらは前回の槍ヶ岳山行では泣く泣く諦めたポイントだったので、今回は行っておきたったんです。
でも、この体調と荷物を抱えて、プラス1時間歩くのはちょっと無理だろう…と。
ただ、何とかして行く方法はないか、と考えた時に、ぼくの頭に浮かんだのは、「ザックをデポして空荷で往復する」でした。
嘉門次小屋へ向かうことに決めた。
やっぱ、空荷は楽。
こんなに自分の体って軽かったんだって、と本気で思った。
嘉門次小屋。
普通の服を着た人達がいっぱいいて、山小屋だけど、山小屋っぽくない空気がありました。
岩魚を焼いてる場所はうまく見つけらなかったんですけど、普段どこで焼いてるんでしょうか…。
次回はここで岩魚定食を食べるんだ、食べるんだ。
何故か、お墓ではないけれど、合掌。
続いて明神池です。
朝もやに包まれる明神池がキレイだっていうことで、嘉門次小屋か明神館での宿泊も考えたんですけど、最終日くらい普通の宿に泊まりたいよねっていうことで、上高地宿泊にしたんですよね。
涸沢もそうだけど、やっぱり一度で回りきってしまうと、次につながるものがなくなってしまうし、程よく後に引く物があったほうがいいよね。
まあ、ここで御朱印をいたただけたので、明神周辺でやりたかったことの殆どは、今回の旅で達成できたかな。
嘉門次小屋で買ったお土産と、明神池でいただいた御朱印帳を抱えて、同じ道を通って明神館に戻りまして、買い足したものをザックにパッキング。
何かあんまり持ってきたものを食べなかった事と、こうやってお土産ばっか買ったせいで、多分ザックは行きより重くなってる気がしなくもない。
(…そう言えば、結局ザックの重量って計らなかったなあ。)
そして、また重いザックを担いで歩きまして。
この頃には、もう雨は上がっていたので、レインウェアは脱いでザックとザックカバーの隙間に押し込んでいました。
ただもう雨か汗か分からないくらい自分が全身ずぶ濡れだったので、レインウェア脱ぐとちょっと寒いんだけれど、だからと言ってレインウェア着ると暑いし。
でもやっぱり一枚着て蒸し暑いのは、不快でしかなかったので、レインウェアを脱ぐ、という選択肢を取りました。
とにかく一秒でも早く上高地の宿に入って、休みたい。
それにはちょっとでも早く歩くしかないわけですが、足も腰もいい感じに限界が近かったので、そんな早いペースで歩けるはずもなく。
(手ブレですいません。)
小梨平のキャンプ場を通り抜け、この看板を見た時に、ぼくは言葉にならない声を出していました。
多分、あともうちょっとだーみたいなことを言いたかったと思うんだけど、未だに自分がこの時なんて言ったのか、よく分かっていない。
河童橋。
今回、この河童橋を対岸まで渡りきりまして。
今回の旅のお宿はここ、五千尺ロッジです。
(五千尺ホテルは高すぎて…。)
今回、一人で宿泊ってことで、若干高めではあったんですけど、スキーヤーズルームとのお部屋がとれまして、何とそのお部屋が一階で、しかも自分の部屋がフロントのすぐ近くっていう幸運にも恵まれました。
ほんとこの時ギリギリの状態でお宿にたどり着いたので、二階の奥の部屋です、って言われたら軽く絶望していたと思う…。
自分自身が雨と汗でぐしょ濡れだったので、靴だけ脱いで床に寝転がりました。
帰りの上高地街道は本気で辛くて、もうキャンセル料払ってでも、途中で泊まろうかとも真剣に考えたんですけど、予定通りここまで歩けて良かった。
ありがとう。
自分の足。
腰も。
いいや、体もか。
このままお風呂に入って、昼寝したい気分で一杯だったんですが、着替えがないんです。
そう、着替えは初日に上高地の手荷物預かり所に預けてしまっているので、時間までに取りに行かないと、ホントの意味で旅が終わらないわけなんですよ…。
ただ、すぐには動けなかったので、暫く休憩してから手荷物を取りに行って、ついでにお土産を買って帰ってきました。
ここ五千尺ロッジのお風呂ですが、温泉ではないっていうことでしたが、非常にお湯がまろやかで、体を沈めると疲れでお湯に溶けていくのが分かりました。
風呂上がりのコーラ、最高。
これ以上に美味いものはないね。
これがあれば、これさえあれば生きていけるよ。
(4日目に続く。)